猪突直進

人間の擬態で楽しいものこと場所へ赴く猪の忘備録。

雑食ないのししはエンタメもいただく。

テニスとテニミュとテニミュとお前

ミュージカルテニスの王子様の最後の試合が千秋楽をむかえました。まだ映画祭もネルフェス2014もDream Liveも残ってはいるけれど、本公演はこれにて終了。最後の試合が終わって、テニミュ2ndシーズンって季節はもうすぐ終わります。いい夏だった?どうだった?
ちなみにわたしはどうにも2ndシーズンにはいくつかの理由で最初から最後まではまりきらないまま気が付いたら夏が終わってしまっていたのですが、なんでこの夏にどっぷり浸れなかったんだろうなーというのは、2ndシーズンのことを覚えている間にまとめておきたいと思います。あんまり浸れなかった季節のことは、時間がたてばたつほど忘れてしまうと思うので。

河村隆は親友の夢を見るか

2ndシーズンでは、1stシーズンの時4公演だった青学の校内ランキング戦と不動峰聖ルドルフ学園と山吹をまとめ、2公演として上演しました。ぎゅっと詰め込んであります。
ルドルフ・山吹公演に関しては密度が詰まっていて、圧倒的なスピード感で試合が進み、曲もテンポアップして、山吹は校歌がシーズン越しでやっとできたし千石清純にも曲ができたし、見てるとそれだけで脳汁だばーーーーって出る系の快感感じる演出になっていたと思うのですが、一つ一つのエピソードに対する尺が短くなっていたり、カットされたりしていました。
大半の人が脳汁だっばーってできる、全体的にテンポアップした2ndシーズンを最初に体現した公演だけれども、ぎゅっと詰め込んで限界までテニミュとしてブラッシュアップする中で、特定のキャラクターやキャストが好きだった人にきっと色んな傷を残したんじゃないかなーって思います。
なんでかって言うとまず私は傷ついたからです。
(※ここまで自分が傷ついた話をするための前ふり)

わたし、テニスの王子様って作品の中で、だれが一番とか言えないくらい大好きなキャラクターが3人います。
まずは越前リョーマ。(どんな作品でもドはまりする時にはだいたい主人公にハマるわかりやすいタイプです)
それから越前リョーガ。(映画めちゃくちゃかっこよくてずっと本編に出るの待ってました)
そして残るひとりは河村隆です。
青春学園中等部3年4組5番(めっちゃ覚えやすい)で寿司屋の息子で美化委員の河村隆、みんなからタカさんって呼ばれて親しまれてる、青学のパワー担当。アグレッシブベースライナー。
そんなタカさんには、四天宝寺との試合の際に「親友」なんてこっぱずかしい言葉で紹介される他校の友達がいます。
山吹中学校3年の亜久津仁です。お互い別の中学校に通っているし、タイプ的にも特に接点なんてなさそうに見えるタカさんと亜久津は、原作では小学校時代に同じ空手道場に通う昔なじみです。
パワーに恵まれているのに気弱な性質が災いし空手では選手としての芽の出なかったタカさんと、どんなスポーツでもトップを取れると言われるほどの理想的な身体を持って生まれた不良少年亜久津。性質も性格も全く違う二人は、都大会の時点では親友とは到底呼べない関係でした。
そんな二人は都大会決勝戦の試合の前に対戦校の選手として再会し、越前リョーマとの試合で敗れた亜久津はテニスに対する姿勢を変えるきっかけを得るし、タカさんは亜久津に臆せず挑む越前リョーマの勇気に力をもらいます。
それ以降は都大会決勝戦が終わってから全国大会準決勝に至るまで原作でも特段二人についての描写はありませんでしたが、タカさんが石田銀との試合中、波動球でコート外に吹き飛ばされまくる最中に颯爽と現れる『タカさんの親友 亜久津仁』の登場フラグとして、都大会決勝での再会は外せないイベント。私はそんな風に思っています。

だというのに!!!!
2ndシーズンのルドルフ山吹公演では、タカさんと亜久津に関するイベントはさくっとバッサリ全カットされていました……
わたしはこれにめちゃくちゃ傷ついた。傷ついたっていうか、はじめてルドルフ山吹公演を見た時はもうひたすらショックだった。

テニスの王子様は原作も完結しているし、一度は1stシーズンで原作エピソードを走り切っている、終わりの定まった作品です。もちろんわたしもこの先全国大会準決勝でどんな試合が行われるのか知っています。
全国大会準決勝のS1で行われる石田銀河村隆の試合が、どれだけ熱くて、泥臭くて、力任せで、全力でぶつかりあって気持ちのいい試合であるか、わたしはよく知っています。そして試合の最中、ボロボロになったタカさんを鼓舞するために亜久津がやってきて、「死んでこい」なんてテニスの試合にはそぐわないような応援で、タカさんの背中を押すことも。
だから2ndシーズンは、四天公演であの試合があることが解っていて、その上であの試合で親友なんすよ!なんて紹介される亜久津とタカさんのエピソードを削るんだなってことが、本当にショックでたまらなかった。

脳みその感情的じゃない部分で考えると、納得できないわけじゃない。
2ndシーズンが始まったばかりのころ、テニミュの公演は座席が埋まっていないことがよくありました。(震災とか、時期的なものもあったとは思う)
だから、一刻も早く人気のある学校の公演にたどり着いて収益性を上げる必要があっただろうし、そのために最初の2公演に1stの4公演分を詰め込みたかったんだろうなとか。
なんてったってテニミュは慈善事業ではないわけだから、この先も公演を続けていくためには、はやく収益を安定させるのが大事だからしかたない。
それにこの公演の作中でタカさんと亜久津が再会しなくても、テニミュテニスの王子様という原作が存在してそれを読むファンが多い作品なのだから、展開の補完も容易にできる。

ただ、そんな風に納得しようとする理性をとっぱらって素直な気持ちで考えると、削ってもいいエピソードとしてタカさんと亜久津の関係が選ばれたことがひたすら悔しかったのです。
これめちゃくちゃ文字にするのも悔しくてたまらないんだけど、だってもしタカさんがもっと人気のあるキャラクターだったらきっとこうはならないはずだから。
タカさんは決して大人気!なんて言って通るキャラクターではないので、だいたいの人はあのエピソードが削られてたとしても、ああ削られたのか程度の認識で特に問題にはならないんだと思う。
実際の所はどうだかわからないけれど、少なくとも制作サイドにはそう判断されたんだろうなって考えるのがめちゃくちゃ悔しかった。
そして、そんな風にキャラクター描写の優先されない作品作りで都大会のエピソードが削られても、四天宝寺との対戦公演では、S2の試合中に亜久津はやっぱりやってきて、河村隆の親友として描かれるんだろうと考えるともう、はらわたが煮えくり返る思いでいっぱいでした。2ndテニミュの大元のストーリーでは一切絡んだことがなかったはずなのに、そんなことは全然なかったことにされるんだろうなって。
実際のところどういう判断でルド吹の脚本演出になったのかなんて私には判断のつけようもないわけだけど、ルド吹公演を生で見た日からもう、そういう風にしか見えなくなってしまいました。

そして一旦そんな気持ちになってしまうと、あとはもう悶々とルド吹公演のあとの2nd四天公演のこと考えちゃうんですよね。
亜久津との絡みがカットされたってことは四天公演のS2でも亜久津のエピソード削られるのかなー、いやいやさすがにあのエピソード取っ払ったら S2の試合する意味が半分喪われるよなー、でも2ndがそんな風にキャラの人気で展開割り振りしてくならS2削れちゃっても問題ないのかもしんないよなー、いやでも四天は学校人気あるからエピソード削ったらそっちから物議醸すだろうしやっぱ普通にやるのかなー、ってことは地続きなはずの2ndシーズンの世界では亜久津とタカさんの都大会での諸々はないうえで四天のS2に繋がるのかなー……やだなー。

たぶん、テニミュが公演ごとに独立した世界観で、前後の繋がりがあってもなくても問題ないような世界観の話を上演しているならこんな気持ちにはならなかったんです。でも今のところはやっぱりテニミュはミュージカル『テニスの王子様』で、つまりテニスの王子様の物語をミュージカルでやってるんですよね。
だから、2ndのはじまりである不動峰との試合から全国大会決勝まで、物語は一本の川みたいに繋がってるとわたしは感じでいる。
未来のために必要なはずのエピソードが削られたのが心底許せなかったし、悔しくてたまらなかったし、ルド吹見てから四天公演までずーーーーっとこういうこと考えずにはいられなかった。頭の中のスイッチ切り替えて考えないようにしてテニミュ楽しもう!って思えばしばらくは考えないでテニミュ楽しむモードに切り替えられるけど、ずーっと考えない状態ではいられなかった。
3年くらいずっとこの悔しさと不安と、エピソード切って上演するって決定した制作への腹立たしさみたいなものを抱えてテニミュを見ていたし、そんなの当たり前だけど楽しいわけがなかったんですよね。
だからわたしは、タカさんと亜久津が都大会で言葉を交わす描写のなかった2ndシーズンの物語が終了して、正直言うとすごくほっとしています。
とりあえず、わたしが受け入れられない改変の入った物語が終わった。
悲しんでいる人の方が多い中でその淋しさとか悲しさを共有できないのはすごく残念だと思うけど、いまとても安心しています。

あらためて文章にしてみてやっと自覚したんだけど、2ndシーズンを素直に楽しめなかった理由の5割くらいの理由は、きっとこの気持ちのおさまらなさによっていたんだなー。


たったひとりの越前リョーマという存在

タカさんと亜久津の描写カットが5割方を占めていると自覚した今別にこの続きを書く必要はないような気もするけど、せっかくなんで残りの理由も形にしておきたいと思います。
わたしが2ndシーズンにどっぷりハマれなかった理由の、まず残りの2割。
プリンスオブテニミュこと小越勇輝さん演じる越前リョーマ。端的に言うと、小越さんが演じる越前リョーマは、私の好きな越前リョーマではなかった。

小越さんは間違いなく越前リョーマだし、不動峰戦で試合の始まったあの日から今まで着実に努力を重ねて進化し続けている役者さんだと思うのですが、私の好みとはちょっと違った。
これってシンプルだけどわりとどうしようもない理由です。
しかも1stと違って、2ndでは越前リョーマには一切の代替わりがなかったのが個人的にはすごく大きかった。
1stの時、青学は長くても2年に1度は代替わりをしていました。残って人間バトンになるキャストもいたけれど、どのキャラクターが固定ということはなかった。
越前リョーマに限らず多少好みではない解釈で演じられていても、わたしはわりと今だけだと思えばこういう解釈もありだなって割り切って楽しめてました。時には、頻繁に代替わりを繰り返す中で思ってもみなかった新しいキャラクター解釈に出会って、なるほどこのキャラクターにはまだこんな可能性が残ってたのか!なんて感動することもしばしば。
結果として初代から5代目に至るまで通年テニミュをそこそこ楽しめていたのですが、2ndではそうもいかなかった。代替わりって割と骨肉の争いの元になる人によっては苦々しい事象の代名詞みたいなところもあったと思いますが、やっぱりあのしくみ自体は結構好きだったなーって思います。
さらにわたしは、テニミュの板に乗っている間は中の人がどんな人なのかにはあまり興味を持てない根っからキャラクター目当ての人間なので、小越さんがどんなに真面目でストイックで努力の天才でかわいい顔に似合わずその実とんでもないファッションモンスターで時には闇鍋にハバネロ入れるって言っちゃう小悪魔で気心知れた共演者にはこわがりだったりいたずらっこだったりな一面があったりで魅力的な人物だとしても、テニミュを見てる間の好みではないという感想にはあまり変化がなかったのです。

そして残りの3割

タカさんが5割、越前リョーマで2割。じゃあ残りの3割ってなんなんだろうなーってシーズン中から考えてたんですけど、あとは作品をどう楽しむかの問題だったのかなあと思います。
さっきの話をひっぱりますが、小越さんって前述の通りに真面目で努力を惜しまないすごい人なので、当たり前だけど2ndシーズンを楽しんでいる青学とか越前リョーマ好きな方はわりと小越さんのことも小越勇輝の越前リョーマのことも好きなんですよね。(わたしの目につく範囲においては)
私にとっては好みじゃなくても、おごたん最高!おごたんリョーマ最高!!!(雑な要約)みたいな人の方がわたしの目につく範囲においてはけっこういらっしゃって、わたしも越前リョーマってキャラクターはものすごく好きなのに、同じく越前リョーマ好きな人との感想のギャップを埋められないままになってしまったのが、自分でびっくりするくらい息苦しかったです。
別に好みじゃないこと自体はたまに口に出してたし、それによってわたしが周りの人に与える威嚇感とか威圧感とか不快感とかの方がよっぽどでかいんだろうなーとは思ってるんですけど

テニミュに限らない話なんですが、自分が楽しいものにはまる時って、はまる対象が楽しいのはもちろん大前提として最重要で、だけどそれだけではまれるかっていうとそうじゃないんですよね。
少なくとも私はミュージカルとか演劇とかライブみたいなものだったら、その日その時その場の空気感が自分にとってどうだったかで感想が結構かわります。
あくまで自分の感覚でしかないんだけど、何かを見終わったあとに自分が抱いた感想と会場の雰囲気が似通っていればその雰囲気に陶酔してめちゃくちゃ楽しかったな…ってその記憶をかみしめることができるし、もしだれかと一緒に何かを見に行って、相手と自分のテンションが同じになって感想を言い合えるとすごく嬉しいとか、そういうの。

山吹でのエピソードの削り方が許せないとか、小越さんの越前リョーマが好みじゃなかったという直接的な話ももちろんハマれなかった原因の一つではあるんですが、それに付随した、会場や周りとの温度差みたいなものが結構重要だったんだなと。その空気に4年間しっくりなじめなかった。もしくは、なじむ気分になれなかった。
人によっては、三つ挙げたどの理由もなんだそんなことかって感じなんでしょうが、私にとってはやっぱりどれも重要なことで、全部の理由が合わさって2ndにハマりきれなかった。
2ndの公演期間中から、こういう話をしたかったけどどうにも言葉にする決心がつかないままずるずるときてしまい、一つの季節が終わったいま、やっと形にできるようになりました。
これってごく個人的な私の厄落としのようなものなので、これで色々考えるのはひとまずやめにして、次の季節に備えて準備を始めたいと思います。